─新曲の『Apologize』はGLAYにとって初の無料配信楽曲ですね?
TAKURO(以下TA):はい。あまり配信というスタイルにこだわっていたわけではないんですけどね。『Apologize』は、曲作りの時から“個人的な思い”で作っていたし、ライヴで演るということも想定していなかったんですけど、導かれるままにメロディと歌詞が出てきた。最終的にはライヴで演ってみて、デビュー15周年というメモリアルな年でもあったから、「心配かけてごめんね」「今までありがとう、これからもよろしく」って感じになった。それもまた導かれた賜物だと思う。だから、俺としては“早くみんなに届けたいな”って気持ちがあって。要するに、プレゼントでいいじゃないかと。お礼として、みんなの元に届けばいい。それが配信という形であれば、CDとして踏まなければいけない手続きが必要ない。例えば今日、マスタリングが終わってしまえば、明日、みんなの手元に届くことになる。そういう“行程”を思いきり楽しんでしまおうと。大事なのは「ありがとう」って気持ちと「春に出したい」ってこと。仕込んでタイアップを取って宣伝をやって……とかだと遅すぎるんですよね。そういう気持ちになれたことが、GLAYにとってひとつの成長なのではないかな。
─一応今回配信は無料ということと、友達にプレゼントということですよね?
TA:そう、言うなれば無料配信で、GLAYのライヴにあるようなあの温かい雰囲気とか、GLAYがきっかけで全国の人たちと交流を持てたというメッセージをもらいますが、“それを地で行ければいい”と思いますよ。GLAYはこれからもたくさんの曲を書いていくだろう…そんな中で『Apologize』みたいな曲が1曲ぐらいあってもいい。15年ぶりに自由…というか、アマチュアの頃に戻った感じなんです。新しい出会いに対してワクワクしている。GLAYも今は少し立ち止まってこの先のことを考えなければいけないのでは?と。19歳の時、ライヴハウスをいっぱいにしたくて自分たちのデモテープを無料配布したり、活動に充てるために500円で売ったりしてた時と変わらない(笑)。それは“当たり前”のことだった。そんなことをもう一度やりたいエネルギーが湧いてきている。もちろん、そのあとに宣伝のプロのお世話になったりして「僕らはいい音楽を作ればいいんだ」と思った時もあったけど、もうそんな世の中ではないような気がしてね。
──あと、例えばこの曲がどんな経路で世の中に出ていってどんな影響を与えるか?ってことは、キャリアの中で培われたシミュレーションとしてある程度わかるでしょう?
TA:わかる。GLAYの音楽を一番知っているのが自分たちだとしたら、今回の『Apologize』なんかはタイミングを待ってマキシシングルにするとかが順当だと思う。でも、それだと当たり前すぎる。この曲は、もっと自分たちに近いところから発していきたいなと思う。新しいメディアを無視しているわけではないけど、やはり新しい扉は開けてみないとわからない。誰かが、心を尽くしてくれたあの人に『Apologize』と共にひと言メッセージを添えて贈ってくれたら、そういう状況こそ『Apologize』にもっともふさわしいと思う。時季も時季だしね。
──春先が楽曲のモチベーションになってきたことは、リーダーの場合明らかですけど、楽曲が届けられるそのサマが、大袈裟にならずかといって地味にもならず、「小さな気持ちだけど真心なんだ」というところを発表の仕方でどうするのか? そこにリーダーは心を砕いたと思う。
TA:確かに大袈裟にはしたくない。曲を1曲届けるにあたり、付いて回る雑事をもう1回見直さなければいけないと思う。だけど、音は届けたい。とすると、当たり前のパッケージではなくなる。時代の変わり目が、自分たちの姿を改めて映し出しているような気がしてね。音楽だけではないところの“らしさ”に向き合える余裕ができたというべきかな? 15周年を終えて、ある種の絆を見たから、そのことから来る自信かもしれない。「聴きたい人がいて、聴かせたい人がいる」って当たり前の仕組みについて、気を遣って大きな声で言わなかったような気がする。
──楽曲は、当然のこと自己表現であり自己発露だから、発信なわけです。「僕の気持ちをわかってほしい」が、ボトムにある。その気持ちをどのように伝えるか? 今はそれすらも吟味する時代ですね。伝える方法を模索する必要がある。例えばCD不況と同じように活字不況でもあって、音楽雑誌も終わっていくものがある中、その雑誌の価値を高めるためにネットなど他のメディアを使って高めていく方法もある。早い話が「価値をどう伝えるか?」なんです。あとは、身も蓋もない言い方になるけど“やる気”です。
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